貴文がプロポーズするまでの道のりを記したブログ
リリースの日付 : 2007 - 05 - 07
「夢は会社で普通の仕事をすること」――インターネットカフェを「家」として臨時雇いで働く「ネットカフェホームレス」は、日本の社会制度の変わりようを表している。(ロイター)
タケシ・ヤマシタさんはとてもホームレスには見えなかった。
汚して風合いを出したジーンズからカジュアルな紺のストライプのTシャツまで、あらゆる点で彼はトレンディな東京人だ。
だが26歳のヤマシタさんは、定職とアパートを失ってから1カ月間、毎晩インターネットカフェのリクライニングシートで眠っている。
ホテルよりも安く、インターネットアクセスと数百冊のマンガがある。電子レンジにシャワーまであり、朝、清掃や基本的な事務作業などの臨時雇いの仕事に出かける前に体を洗うこともできる。
この生活をどのくらい続ける気なのかという問いに対し、ヤマシタさんは笑って肩をすくめた。
「日本の状況が良くなるのを期待しています。新しい世代の日本人はお金がありません。多くの若者には意欲がありません。わたしにはお金はありませんが、夢があります」と彼はPCとたくさんのマンガが置かれたブースの中で話した。
では、彼の夢とは何なのか?
「分かりません。たぶん、会社で普通の仕事をすることでしょうか」
ヤマシタさんは、日本の多くの「フリーター」――「フリー」とドイツ語で労働者を意味する「アルバイター」を合わせた言葉だ――の1人だ。
臨時雇いの仕事を渡り歩くフリーターは、1990年代に日本とその終身雇用制度を襲った不況の副産物だ。
彼らの時給はおよそ1000円。東京という世界でも特に生活費の高い都市で部屋を借りるのに苦労することもしばしばだ。都心部では慎ましく30平方メートルの部屋を借りるのにも、優に月15万円かかることもある。
今は景気が回復しているが、多くのフリーターは何年も非熟練労働者として働いてきた末に、この景気回復に乗り遅れている。雇用を拡大している企業のほとんどは大学新卒者を雇用するか、基本的な作業を中国など低賃金の国に委託する方を好んでいる。
サイバーカフェが「家」
東京の上野でインターネットカフェを経営するオーナーとして、マサミ・タカハシさんは日本社会の変化をつぶさに見てきた。
彼のカフェの近くでは、リクライニングシートに座るお金もないホームレスの人々がダンボールの中で眠っている。
着物を着た中国人ホステスが、酔ったサラリーマンを支えている。彼はこの後タカハシさんのカフェで一眠りするつもりだ。
不況で打撃を受けた企業が飲み会――日本の企業文化において欠かせないものだった――とその後のホテル宿泊の費用を出すのをやめた後、ネットカフェが安上がりなホテル代わりになると気付いたのはこのサラリーマンが最初だった。
タカハシさんのカフェを家にしている顧客もいる。愛想が良く、マレットヘアに青いトレーニングウェアのタカハシさんは、よくフリーターがカフェに避難してくるのを見かける。そうした客を気の毒に思ってお金を貸すこともあるという。
「社会制度の変わりようが表れています。われわれ日本人にとっては少々悲しいことです」と彼は頭をかきながらReutersに語った。
都心部のインターネットカフェで一晩過ごす(フリーソフトドリンク、テレビ、マンガ、インターネット込みで)には1400〜2400円程度かかる。プラスチックの小部屋で眠る日本の有名な「カプセルホテル」よりも安い。
つまり、金曜の夜には渋谷(東京の主なエンターテインメントスポットの1つ)の薄暗いインターネットカフェは満員ということだ。
午前3時、スーツを着たサラリーマンが大いびきで眠っている。彼の靴はリクライニングシートかソファ、コンピュータ、ハンガーを備えたブースの外にきちんとそろえられている。
ハイヒールとミニスカートのおしゃれな若い女性もいる。夜遊びの後で終電を逃したという。
ネットカフェの自由さを都合よく利用する人もいる。
「よく彼氏とここに来ます。今日は学校を抜け出して来ました」と16歳のナオミさんは言う。彼女は白いシャツにタータンのミニスカート、ニーハイソックスの高校生だ。
ナオミさんは長い茶色の髪を恥ずかしそうに払いながら、15歳の頃から、両親に友だちの家に泊まると言って、ボーイフレンドと一緒にネットカフェに来るようになったと話す。
「たいていは一晩中話したりマンガを読んだりして、朝になったら学校に行っています」と彼女は語った。
サイバーホームレスはワーキングプア
前出のフリーターのヤマシタさんのように、サイバーホームレスの多くはこうしたさまざまな人たちの中に溶け込み、匿名性と避難所を見出している。
「若いサイバーホームレスは、ほかの若者たちと見た目は変わらない」と話すカズマサ・アダチさんは、もっと優雅なネットカフェを経営している。彼のカフェではスタッフはスーツを着て、顧客はホテルの受付のような丁寧で効率的な接客を受ける。
アダチさんは、カフェ住人は重いバッグを抱えているので見分けが付くという。
「彼らは本当のホームレスとは違います。ワーキングプアであり、多少のお金があるからです。路上に住んでいる人たちはまったくお金がありませんから」と彼は付け加えた。
サイバーカフェホームレスに関する公式のデータはない。厚生労働省がこの現象に関する幅広い調査を計画していると新聞で報じられているが、この問題とその社会的影響の範囲を測るのは難しい。
事例証拠から見ると、彼らの多くは20代半ばから後半のフリーターで、2〜3カ月ネットカフェに寝泊まりしてから、もっと長く住めるところに落ち着くようだ。
それよりも年上で貧しい人々は、漂流生活から抜け出すチャンスはもっと少ない。時に恥ずかしくて家に帰れず、気付けばサイバー社会の最下層にいることもある。
彼らは蒲田のようなさびれた東京の郊外に集まり、1時間100円でリクライニングシートの付いた換気が悪く煙たいブースを借りる。
「居心地は悪いです。よく眠れません」と蒲田のあるカフェにいた匿名希望の客は話している。